2019.10.11
資産運用の基礎知識
50代から始める老後に向けた資産運用
資産運用の方法
(概要)50代は、老後の生活資金を準備する時期です。50代、60代で老後の暮らしに不安を抱える人は6割~8割といわれ、主な不安の要因は老後の生活費です。年金では、十分な生活を送ることができない、そう考えている人が資産運用を検討しているかと思います。今回は、50代の資産運用について見てみましょう。
さまざまなデータに見る老後の暮らしへの不安
日本FP協会(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)が行った「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」を見ると、老後の暮らしに50代の79%が「不安・どちらかといえば不安」と答え、60代の62.5%が「不安・どちらかといえば不安」と答えています。
「安心している」と答えた人は50代で3.5%、60代で5%にすぎません。これは、老後の暮らしに関するさまざまなデータと合致する結果になっています。
金融広報中央委員会による「家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査] 平成30年調査結果 」においても、「老後の暮らしの経済面の状況」について、「非常に心配である」「多少心配である」という回答が約8割を占めています。
そして、これら二つの調査において「老後の生活費の収入源」として一番頼りにしているのは、「公的年金」です。
しかし、公的年金を頼りにしているというのは、公的年金によって不足のない暮らしができると考えているわけではありません。内閣府の調査では、老後の「就業による収入が得られなくなった場合の年金による生活費」について、「足りないと思う」と答えた人が50代では65.6%にのぼり、60歳以上で56.9%になります。
ではその「年金による生活費」だけでは、どのくらい不足するのでしょう。
厚生労働省が公開している平成30 年度の年金額改定についてお知らせでは、年金の受給金額は、厚生年金がもらえる夫と国民年金だけの妻という組み合わせで、約22万円です。
そして、総務省の調査による「高齢夫婦無職世帯の家計収支」の消費支出を見ると約26万円。
年金も税金や社会保険料が差し引かれ手取りは約95%程度と仮定をすると、月額約5万円は不足することになります。
定年後までに作りたい資産
しかし、夫婦合わせて約22万円という数字は、いわば満額回答の場合で実態とは違うという意見もあります。
もう一度日本FP協会の調査結果を見てみると、「配偶者とセカンドライフを送ると想定した場合の生活費」について、最低限必要な生活費(月額)はどの程度だと思うか聞いたところ、平均で20.6万円を想定しています。また希望する生活費(月額)はどの程度だと思うか聞いたところ、平均は25.7万円でした。
しかし「自身が得られると思う収入額はどの程度だと思うか」という質問には、「10万円未満」「15万円~20万円未満」という回答が多く、平均は17.6万円となりました。これは希望する生活費の平均額と比較すると8.1万円低い金額となり、セカンドライフにおける生活費の理想と現実に、大きなギャップがあることを示しています。
上記を踏まえ、定年後までに作るべき資産を計算してみましょう。まず厚生労働省、総務省の調査で示された月の不足額約5万円で考えると、その不足分に60歳定年時から日本人男性の平均寿命である81歳まで21年を掛けます。すると5万円×12カ月×21年=1260万円と計算できます。
さらに日本FP協会の調査で示された8.1万円の差で計算すると、8.1万円×12カ月×21年=約2041万円になります。
この数字を見て「それなら退職金でなんとかなる」とお考えになるでしょうか。しかし、この数字は、「日常生活費程度をまかなうため」の数字であって、もし、ゆとりある老後を送りたいと考えるのであれば、月額35万円程度は見ておくべきでしょう。すると、ここにあげた数字ではまったく足りないことになります。
そのために貯蓄は欠かせませんが、銀行預金の利率を考えれば、投資によって資産を増やす選択肢を持つことが必要になってきます。
50代からの資産運用手法
資産運用の方法として一般的に考えられる金融商品は、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式です。一般的にリスクの小さい順に並べれば「国内債券→外国債券→国内株式→外国株式」となります。
資産運用にあたっては、こうした金融商品への投資比率をどうするかが問題になります。それをポートフォリオと言います。安全運転でいこうとすれば、国内債券の比率を高め外国債券や株式の比率を抑えることになります。リスクを抑えた「守りの資産運用」と言えます。
逆にある程度のリスクを取り、より大きなリターンを望むとすれば、国内債券の比率を低くし外国債券、株式の比率を高めることが考えられます。いわば「攻めの資産運用」です。
では、50代の資産運用はどちらのスタイルをとるべきでしょう。当然、それぞれの金融資産によっても異なりますが、50代というのは、子供の教育資金の負担が一段落し、また、住宅ローン返済のゴールが見えてくるため、セカンドライフに向けてまとまったお金を準備できる貴重な時期でもあります。そのため、極端な「守り」の姿勢に入ってしまわないようにすることがポイントです。
しかし、これまで資産運用の経験がない人は、自分自身でどのようにポートフォリオを組んでよいのかとまどうことでしょう。
そこで力になるのが資産運用のアドバイスを行う金融機関の担当者や、独立系のアドバイザーとして注目されているIFAです。
資産運用の相談することに、敷居の高さを感じる人が少なくないようですが、そんなことを感じる必要はありません。堅実な資産運用をお考えであれば、ためらわずに相談なさることをおすすめします。老後の資産形成を考えるのに、50代はうってつけの時期です。